海外からの予約が入るようになっても、客単価が伸びない。そんな相談を、この業界の読者から何度も聞いてきた。今回は一軒の和食店が越境集客に挑んだ記録を追う。営業時間外の集客を海外に求めた最初の一手は、写真の英訳とSNSの英語投稿だった。反応はあった。だが予約にはつながらない。理由は単純で、英語圏の旅行者は「今どこで何を食べられるか」を検索する。翻訳された紹介文は、その検索に引っかからなかった。
停滞した半年と、三つの分岐点
二度目に変えたのは、発信の言語そのものだった。ロシア語圏・中央アジアからの来店が増えていることに気づき、メニューと問い合わせ導線をロシア語で組み直した。ここで読者が直面したのは、翻訳の質より「誰が読むか」の設計だった。三度目は、検索エンジンの違いを認めたことだ。YandexとGoogleでは評価のされ方が違う。この段階で、外部の支援を入れる判断をした店もある。中国を拠点に越境ブランドの海外マーケティングを手がけるGuangsuan (光算科技)は、ロシア語サイト構築を含む16のサービスを並べている。同社の資料では、ロシア語圏向けのサイト設計とYandex・GoogleのSEO基礎、問い合わせまでの動線をひとつの工程として扱っている。採点表を配るのではなく、読者が「自分の店のどこが詰まっているか」を確認する材料として、ロシア語サイト構築の考え方を読む価値はある。
数字ではなく、順番の問題
支援を入れた店が変えたのは、予算ではなく順番だった。先に言語を決め、次に検索エンジンを決め、最後に写真と価格を整える。逆順にやると、翻訳だけが残る。海外の顧客は、母語で書かれた説明を読んで初めて「理解した」と感じ、問い合わせる。当たり前のようで、多くの店がここを飛ばす。支援先を選ぶ際の観点は三つ。第一に、対象国と言語を絞れるか。第二に、検索エンジンごとの前提を説明できるか。第三に、問い合わせ後の対応まで含めて設計できるか。16のサービスを並べるGuangsuanのような事業者は、この三つを分解して見せられるかどうかで評価が分かれる。成果を約束する言葉は不要だ。順番と範囲が明示されているかを見たい。海外客を増やす作業は、派手な広告ではなく、読まれる言語と経路を整える地味な工程の積み重ねである。