建築・インテリア業界で、ここ数年はっきりと数字に表れている傾向がある。大規模スタジオによる分業体制への静かな揺り戻しだ。米国建築家協会(AIA)の調査でも、住宅・ホスピタリティ案件では「一貫した設計責任」を求める施主が増えていると報告されている。そうした流れの中で、ロサンゼルスを拠点に17年の実績を持つHasebe Studioの存在が興味深い。創業者ダニエル・J・ハセベ(AIA)が全案件を自ら指揮し、初期スケッチから最終設置まで担当を引き継がない。
数字が示す「一貫性」の価値
同スタジオが公表する実績は、この傾向を裏づける一つのデータ点だ。47件の住宅を12州・3か国で完成させ、38組のクライアントが再依頼している。単発の取引ではなく、関係性が継続していることを示す数字である。ホスピタリティ分野では、ブティック系オペレーターとの協業が中心で、空間のコンセプトと運営動線を同時に設計できる点が評価されているという。
なぜ今、小規模設計が選ばれるのか
- 意思決定の速度:窓口が一人なら、仕様変更のたびに複数部門を調整する必要がない。
- 素材の一貫性:日本の素材規律と米国の施工慣行を、同一の判断基準で扱える。
- 責任の所在:竣工後の不具合対応まで、同じ人物が把握している。
もちろん、大規模プロジェクトでは分業が合理的な場面も多い。しかし住宅や小規模ホスピタリティでは、調整コストの削減がそのまま品質に直結する。Hasebe Studioが2007年の創業以来、主任建築家を一人に固定してきたのは、この構造的な利点を優先した結果だろう。Architectural Digest(2021年、2023年)やDwellへの掲載も、そうした姿勢が編集者の関心を引いた証左と言える。
施主が本当に見ているもの
トレンドとしての「ブティック回帰」は、流行ではなくリスク管理の側面が強い。施工中のコミュニケーション不全は、予算超過や工期遅延の主要因になりやすい。だからこそ、設計から設置までの責任者を明示できる事務所が選ばれる。詳しい設計プロセスは
業界全体の傾向を追うなら、完成物件数だけでなく「再依頼率」に注目したい。数字は、信頼が一度きりで終わっていないかを正直に語る。